久慈市「べっぴんの湯」再開おめでとう記念 取材レポート
べっぴんの湯の再開秘話と、その魅力に迫ります!
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こんにちは。三陸DMO@イーティです。
先日、東北一の高アルカリ性を誇る泉質が自慢の、久慈市山根町にある「べっぴんの湯」を訪問させていただきました。
2019年に湯量の枯渇から無念にも営業停止になってしまった、こちらの施設。
多くの「べっぴんファン」が陰ながら泣いていたと思われます。
閉館後、しばらくは久慈市による調査と水量回復のための工事を行っておりましたが、幸運にも再開のめどが立ったとのことで、なんと本年4月にリニューアルオープンいたしました!またあの、つるつるなお湯に入れることに!!
多くの「べっぴんファン」の願いが、天に通じましたね・・・・!!!
しかしながら、再オープンのお知らせを伺った際に、わたくしが思い浮かんだ、様々な素朴な疑問がありました。
「再開にいたるまでにどのような苦労があったのかなあ?そもそも、再開できる見込みって、あったのかしら??」
「お湯の成分は、前と本当に変わらないのかな?」
ほか色々・・・。
ということで、この「べっぴんの湯」再開に関わった地元のキーパーソンに集まっていただき、あれやこれやと様々な質問を投げかけてみました。
べっぴんの湯の再開秘話と魅力に迫る?よもやま話、ゆる~くスタートです。
【取材にご協力いただいた地元のキーパーソンの皆さま】
写真左:新山根温泉べっぴんの湯 支配人[有限会社栄光商会 おんゆ(温癒)事業部]秋元光浩 さん
中:新山根温泉べっぴんの湯 従業員 尾無(おなし) さん
右:久慈市産業経済部商工観光課 観光物産係 大粒来(おおつぶらい)嘉将 さん
イーティ(以下イ):本日はお忙しいところ、お時間いただきありがとうございます。
べっぴんの湯が再開したということで、おめでとうございます!色々とお話を伺えればと思っておりましたので、よろしくお願いします。
秋元さん、尾無さん、大粒来さん:こちらこそ、よろしくお願いします。
イ:では、べっぴんの湯の始まり、そこから伺いましょうか。べっぴんの湯の歴史は、いつからはじまったのでしょうか?
大粒来さん(以下大):新山根温泉べっぴんの湯は 1995年(平成7年)にはじめ小浴場のみで開業したんですよ。そしたらあっという間に大人気になって、翌1996年(平成8年)には大浴場も整備し、概ね現在の形で営業を始めました。
旧山根温泉は1989年(平成元年)に別の場所で営業していまして、現在はデイサービス施設になりました。温泉を利用できるデイサービスとして、そちらも好評なようです。
イ:べっぴんの湯の名前の由来は?
大:平成3年(1991年)に、俳優の故森繁久彌(もりしげ ひさや)さんがヨットで日本一周している際に、久慈港に立ち寄ったんです。その流れで山根地区を訪れた際に、地元の郷土料理や温かいおもてなしに感動して、山根地区を「べっぴん村」と命名されました。そのエピソードから、ここの温泉も「べっぴんの湯」と名付けられています。
秋元さん(以下秋):だけど、今の若い人に森繁久彌さんのことを言っても、わからないみたいでねえ・・。
イ:たしかに、そうかもしれないですね~。森繁久彌さんって言われても、若い人が生まれてない頃にご活躍されていた方ですから・・。
秋:森繁久彌さんって誰?と気になったら、私に声かけてください。モノマネリクエスト、喜んで受けますよ(笑)
イ:支配人、ありがたいんですけどやっぱり理解できないかもしれませんが・・(笑) 。ご興味のある方は、ぜひ支配人にリクエストしてみてください!さて、話を戻しましょう、今日はモノマネを見に来たわけでは・・ (笑)。
昔からこちらの温泉は、東北一の強アルカリ泉であり、お肌がつるつるになるとの評判も高いですよね。地下〇mから〇℃のお湯をひっぱってきているのですか?
大:新たに掘削した井戸の2号源泉の深度は地下550m、汲み上げポンプ位置は地下292m、泉温は16.5℃です。
イ:どうしてここの場所から、強アルカリ性のお湯が湧出したのでしょう?
大:温泉の成り立ちを大別すると火山性温泉と非火山性温泉に分けられます。
火山の下の地中奥深くのマグマによって温められた水や水蒸気、ガスが地中にしみ込んだ雨水と混ざり、地面にわいてきているのが火山性の温泉です。
一方べっぴんの湯は、地下550mでも泉温は16.5℃と低く、非火山性の温泉と考えています。非火山性の温泉は地中深くにしみ込んだ雨水などがその過程で温泉成分が溶け込み温泉になると言われていますが、べっぴんの湯はこれに該当すると考えられます。
酸性、アルカリ性の高低を示すpH値とは水素イオン濃度のことですが、鉱石の断面を水が通過する際に水素イオンを引き付けるという説があります。
久慈市は花崗岩や石灰岩が多くみられる地形です。これらは炭酸塩や炭酸カルシウムなどアルカリ性の成分により形成されています。
つまり、地表に降った雨水などがアルカリ性である石灰岩や花崗岩などの鉱石の断面を通過する過程で水素イオンを獲得しつつアルカリ成分が溶け込み、よりアルカリ性を強めているのはないかと考えられます。また、ここ山根地区は降水量が年間を通して多い地域ですので、それも温泉の湯量に影響しているかもしれません。
画像出典:三陸ジオパーク協議会HP ジオサイト「下戸鎖(しもとくさり)の枕状溶岩」
https://sanriku-geo.com/geosite/23-2/
【下戸鎖(しもとくさり)の枕状溶岩は、べっぴんの湯の近くにあるジオサイト。枕を積み重ねたように見える、様々な大きさの溶岩の集まりが特徴。約2億2,000万年前(中生代後期三畳紀)に海山を造る海底火山の噴火により造られたといわれていて、大昔にこのあたりで火山の噴火があったのかもしれない。又多くの雨水がこの地層をつたって流れることで、アルカリ成分を多く含む温泉水へと変化をもたらした可能性がありそうだ。】
イ:ジオパークの地層を通った水が、温泉成分を含んでいるかもしれないんですね。では、べっぴんの湯の湯量が枯渇したわけと、本年復活できた最大の理由は、どういったところに考えられると思われますか?
大:1号源泉の水量が減少した要因ははっきりとはわかりませんでしたが、2019年10月に休館してから状況把握と水量回復のため次の調査や工事を行いました。
①水中カメラを用いた井戸内部の確認により、次のことがわかりました。
・井戸内部の壁の崩れはなかった。
・源泉を取り込むストレーナに付着物がある。
このことから、ストレーナの付着物による閉塞を疑い除去を行いましたが、回復は見られませんでした。
②次いで、圧入ポンプを用いて井戸内の水源地層に圧力をかけて、普段とは逆方向に水を強制浸透させ、帯水層亀裂の閉塞の除去、亀裂の更なる発達、新しい亀裂の発生を促してみました(図1参照)。
(図1)
これにより、ある程度の水量の回復はありましたが、温泉の運営に対しては不十分でした。
イ:久慈市では、安定した湯量を確保するために、なにか工事で工夫されたことはあるのでしょうか?それとも、たまたま掘ってみたら源泉を掘り当てて、湯量が豊富に出てきたので、運が良かっただけですか??
大:過去に地中の様子を調査した結果が残っていましたので、それを参考にしました。
また、2号源泉と1号源泉は近い位置にありますが、井戸の深さが違います。似たような泉質の異なる帯水層を狙ったものです。高さを変えて、新しい所を掘ったんです。
過去の調査結果や、ボーリング業者のアドバイスに基づいたうえで掘削位置を決定しましたが、地中奥深くのことですので確信があったわけではありません。最終的に掘削するかしないか、の判断は、手元にある情報をもとに市長が決断しました。
イ:運が良かった、といっていいのでしょうか?
大:結果的には、運が良かったんでしょうね。
イ:あまり考えたくないですけど、また湯量が枯渇する可能性はあるんでしょうか?
大:とりあえず、当面は大丈夫です。
イ:それを聞いて、ほっとしました~。ちなみに現在は日帰り営業のみとなっていますが、以前は宿泊棟もありましたよね。それの再開も予定しているのでしょうか?予定している場合は、いつごろになるのでしょうか?
秋:宿泊棟の再開は2023年の予定です。今年度改修工事を行うこととしています。宿泊を再開するうえでの課題が、料理なんです。宴会用また朝バイキングはどうしたらよいか・・。本格的に考えないとと思っています。
イ:施設の雰囲気からして、和のもてなしが似合う気もしますが・・。
【食堂部門で提供されているひっつみ定食。久慈地域の郷土食はまめぶ汁のイメージが強いが、こちら山根地区ではひっつみがよく食べられているそう。】
秋:そうなんですよ。地元の山菜とか、川魚とかね。でも山菜は年から年中採れるわけではないし、若年層にも訴求力のあるメニューを考えたいので、洋風でもなにかできないかな~とは考えてますね。腕のいい料理人をスカウトしないとね(笑)。
イ:施設の魅力を磨くため、今取り組んでいることはどんなことでしょう?
秋:マイナスイオンたっぷりの自然に囲まれたこの場所は、ヘルスツーリズムに絶好の場所となっています。お客様には、施設内の温泉に入って、ゆっくりと休憩して、おなかが空いたら食堂で食べて、最後にお土産品を買って、リフレッシュして帰っていただきたいですね。これらのメニューをパッケージ化して、販売していきたいです。
【百歳プラン(温泉+ごはん※プラン限定版+休憩)の販売もスタートした。】
またリニューアルオープンしてから、お客様からのお声で「腰が痛いのが治ったよ」とか、「捻挫にも効いてるみたい」といったことを伺っています。調べてないので断言はできませんが、前と何か成分が変化した可能性もあるようです。
イ:美肌になる、だけではないプラスアルファがあるのかも、ですね。嬉しいエピソードですね。
秋:あと、若い女性が1人でよくサウナにいらっしゃって、長く入っているケースも多くなっています。木の香りがする新しい施設だからなのかわかりませんが、自分用のサウナシートを持ってきてるみたいですよ。
秋:べっぴんの湯は、これからもどんどん若い人に来てもらいたいですね。そこからさらにご家族を連れていらしてくれると、さらに賑わいも出てきますし。
イ:若い人を呼びたいというお話に関連して、雫石町の人気ジェラートショップ「松ぼっくり」のジェラートが、土日祝日限定で販売スタートされるそうですね(※6/19よりスタートしました)。
秋:そうなんですよ!若手職員の尾無(おなし)くんが、雫石までいって研修を受けてきました。せっかくの機会だから、尾無くんも取材してあげてよ(笑)
イ:わかりました、後ほどコメントいただきます~。では、最後にこの記事をお読みになっている読者の方にお話ししておきたいこととか、あればお願いします。
大:べっぴんの湯は久慈市の観光の核ともいえる施設であり、地域活動の拠点でもあるので、地域の活力を生かした持続可能な観光施設となるよう、市でもバックアップしていきたいと思っています。
秋:リニューアルオープンしてから多くの方にご来館いただいて、嬉しく思っています。食堂部門もさらにパワーアップしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
来館に際して、ひとつお願いがあります。野田村方面からよく県道29号を通ってこちらに来るお客様もいるんですが、あまりの山道道路で皆バテテいます。ちなみに冬期間はこの道路、閉鎖されています。もし野田村方面からいらっしゃる場合は、この道はどうか通らずに、いったん国道45号を北上し久慈市内に出てから、県道7号を使ってお越しください。
グーグルマップだといとも簡単そうな道路に見えますが、本当にツラいので、ご注意ください!
イ:ちょっと遠回りして、のほうがおススメなんですね。
秋:ここに来るまでに苦しい思いはしてほしくないですからね~。あと、うちの入浴施設にはシャンプー・リンス・ボディソープが置いてないんですけど、ケチしてるからではありません、ここは声を大にして言いたいです(笑)。ここはお湯の成分が強いので、それで身体を洗浄しているようなものなので、なければなくても大丈夫なんですよ。だけど皆さんはせっかくいらしてお身体洗いたいでしょうから、普段使っているものをお持ち下されば、と思っております。
イ:本日は色々と、ありがとうございました。さっそく、わたくしお風呂に入って帰りたいと思います!
秋、尾、大:こちらこそ、ありがとうございました。
【追記:尾無さんインタビュー】
尾無さんは、久慈市出身の25歳の若者です。べっぴんの湯がリニューアルオープンするタイミングで、前職を退職しこちらで仕事を始めたばかりとのこと。
イ:こちらで働きたいと思った理由は何ですか?
尾:1からのスタートという言葉に惹かれて、自分も1から成長したい、どれくらいできるか試したい、と思って入りました。
イ:なんと、最近スタートしたジェラートの盛り付けにチャレンジされるそうですね!
尾:そうなんですよ、もともと飲食店に勤務していたので楽勝かな、と思っていたのですが、研修でやってみたら、きれいにできなくて・・。毎晩胃が痛くなってますが、練習を重ねて皆さんに満足いただける盛り付けで提供したいと思っています!若い人をジェラートで呼び込みたいです!!
イ:頑張ってください!
お湯とサウナに入った後はつるっつるの美肌に変化し、大満足で帰路につきました。
皆さんも、ぜひこちらの「べっぴんの湯」で、癒しのひとときをお過ごしください♪
【べっぴんの湯 施設概要】
住所:岩手県久慈市山根町下戸鎖4-5-1
電話:0194-57-2222
営業時間:9:00~21:00 ※不定休
入浴料:一般(中学生以上)480円/小学生 230円/幼児 無料
食堂、休憩所、産直あり
ホームページ:https://www.beppinnoyu.net/
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久慈市「べっぴんの湯」再開おめでとう記念 取材レポート
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