令和2年度盛岡第三高等学校第一学年 総合探究授業同行レポート★宮古市コース

  • 宮古市
  • 海鮮
  • 海産物

<プログラム提供者>

・(株) 隆勝丸 代表取締役 平子昌彦 氏

・(株)日々旅(宮古観光創生研究会) 早川 輝 氏 (三陸観光プランナー)

・(株)共和水産 専務 鈴木 良太 氏

 

<実施内容・・・・・ 宮古の水産業の取り組み>

・隆勝丸の漁船に乗船し、日出島の景観と海域での漁場見学および水産業取組みについての講話/ホタテ貝の付着物除去作業とホタテ試食(※一部生徒のみ)

・宮古市魚市場の見学と共和水産の事業取り組みについて

《隆勝丸の漁船に乗船し、日出島の景観と海域での漁場見学および水産業取組みについての講話》

10時40分ごろに42名の生徒と2名の教職員を乗せたバスが日出島漁港に到着。天候は昨日の雨天から回復し朝から晴れ間ものぞきましたが、前日の風雨の影響が残り海は少々波が高い状態でした。学校で編成した班ごとに整列し、今回の探究授業をコーディネートくださった宮古観光創生研究会早川輝さんから、受け入れ先の隆勝丸代表取締役、平子昌彦(たいこまさひこ)さんの紹介と、探究プログラムのスケジュールについて説明を聞きました。漁船の乗船については、船が2艘(11名乗りと6名乗り)の対応となるため、3班に編成を行い、班ごとに3回転でスケジュールを消化することになりました。

出航後、少し波が高いこともあり生徒たちは少し緊張した面持ちで船長の話に耳を傾け、周囲の景色を見渡していました。

遠くにジオサイト潮吹穴からも今日は潮を吹きあげている様子が窺え、日出島も軍艦島のような姿でくっきりと見えました。タイミングよく浄土ケ浜観光遊覧船とすれ違い観光客が手を振る光景に思わず感激。来年の1月で観光船の廃止を思うと感情の高まりを抑えきれず、こちらからも手を振って応えました。

船長の説明によると、日出島が外海からの波を防御する役目を果たしているおかげで、日出島漁港で安全、安心して漁業を営むことができ、普段は今日より波が高い日でも漁に出ることが普通であるとのことでした。今日は波が高いため、漁船でのホタテの収穫作業は見られず、養殖が行われている海域の確認をして漁港へ引き返しました。

漁港の周辺は昨年の台風19号により被災した跡も見受けられました。改めて東日本大震災の津波と同様、自然災害の脅威を思い知らされました。とりあえず船酔いもなく約30分の遊覧を終え、全員無事日出島漁港に帰港しました。

今回の乗船体験はほとんどの生徒が初めての体験でもあり、船長の話の中で日々大自然の海と向き合いながら漁業を営んでいる漁師さんの熱い思いを知る機会となりました。

 

次に、平子昌彦さんの自己紹介ならびに水産業の取組みについての講話をいただきました。平子さんは盛岡市都南の出身で地元の小中学校・高校を卒業後、地元で会社勤めをしてましたが、結婚後、宮古の奥様の実家でホタテ養殖業の手伝いをしているうちに漁業の魅力にとりつかれ、25歳の時、義父に弟子入りして漁師の道を歩むことに。東日本大震災前は12戸の漁家がありましたが、津波被災により漁家が2戸に激減した現状に、これからの漁業の衰退を危惧し、何とか養殖事業を再開し事業拡大して漁業の担い手を育成したいとの思いから、株式会社隆勝丸の設立を決意したそうです。日出島漁港でホタテ養殖を軸に、レジャー観光など海を利用して複合的な事業を展開していらっしゃいます。従来の漁業の3k(危険・きつい・汚い)のイメージを払拭し、就労体系を一般社会と同レベルにすること。また担い手確保のためには大規模経営、漁業だけではなく複合的な事業が必要であること等、明確な経営理念を持って事業展開をすることが平子さんの信念です(カッコいいですね!)。

ホタテの養殖事業については、ホタテの養殖工程をすべて日出島漁港で完結し、市場、共販出荷2割、小売や卸売8割、あとは漁協や魚市場を通さず地元企業、地元飲食店や個人消費者に直取引を行い、イベントにも出店しています。ホタテの評価は、個人のお客様から「鮮度が良い」「貝柱が大きい」「歯ごたえがあって甘い」など好評であり、また企業や飲食店からも高い評価をいただいているとのこと。

そのほか自社サイトで消費者へPR、後継者育成としてインターンシップの受け入れも行っており、隆勝丸のホタテの知名度が高まってきていることを肌で感じているようです。これからの隆勝丸の事業の抱負について、ホタテ養殖を軸に、レジャーや観光と複合的に事業を展開して漁協経営や、雇用など地域に貢献し、又漁業従事者だけ雇用するのではなく、営業や販売を得意とする人材を雇用して多様性のある会社を目指したい、と熱く語ってくれました。

最後に平子さんの家族写真が紹介され、息子さんが2人おり長男は海上自衛隊へ就職し、次男が自分の後継者になる予定ですと嬉しそうに話してくれました。生徒からの質問はありませんでしたが、平子さんの漁業に対する熱い思い、そして何よりも地元の漁業に誇りを持ち、漁業を通して消費者との深いつながりが生まれる喜びを実感しながら、日出島地区の活性化に貢献している姿は、生徒たちのこれからの生活や活動にパワーと勇気を頂いたように思いました。

 

《ホタテ貝の付着物除去作業とホタテ試食》
ホタテの陸揚げ後、販売商品として流通するための最後の作業としてホタテの洗浄作業があります。最初の作業としてホタテ貝の表面の付着物を削り落し、ホタテを洗浄する作業を漁師さんの指導により体験しました。漁師さんが使っている小刀で貝の表面を削る作業は、初めのうちは慣れない手さばきでしたが、真剣なまなざしで集中して作業しているうちに徐々に慣れ、自分で削り落してきれいになったホタテ貝を見て満足していた様子でした。
付着物を除去したホタテ貝を水槽に戻した後、時間がたつと生きのいいホタテ貝が水槽から時々跳ね上がる光景に生徒たちは驚いていました。初めて見る光景かもしれません。

最後に全員が集合し、平子さんとじゃんけんをして勝利した5名に新鮮なホタテの試食体験がありました。食べた生徒たちの感想は、皆が新鮮で最高の食感!と満面の笑顔。ささやかな至福の時を体験しました。

 

 

《宮古市魚市場の見学と共和水産の事業取り組みについて》

隆勝丸で探究プログラムを終了後、宮古市魚市場へ移動。市場の敷地内にある鍬ケ崎番屋セミナーハウスで昼食をとり、その後市場見学となりました。昼食後、セミナーハウスで今回宮古市魚市場を案内して頂く共和水産の専務、鈴木良太さん(イカ王子)が紹介され、早速鈴木さんの案内で魚市場へ移動し説明を聞きました。

午後なのに何故か活気がある!これが他の魚市場にはない、宮古市魚市場の特徴です。実は宮古市魚市場では朝と午後の2回競りが行われます。午後1時頃にトロール船の水揚げがあり、この時期はスルメイカが水揚げされてたくさんのトレイにスルメイカが搬入されていました。

発泡スチロールには、本州一の漁獲高を誇る「真鱈」もありました。水揚げされた魚は、市場内で衛生な状態に管理され新鮮な魚の競りが仲買人との間で行われます。競りの様子も見ることができました。

 

約40分の市場見学を終え、セミナーハウスにもどり共和水産の事業の取組みについて共和水産株式会社専務鈴木良太さんの講話を聞きました。共和水産は、岩手県で水揚げされたスルメイカで加工品を作り販売しています。買い付けから最終加工品までの一貫生産することで産地のストーリーを出し、首都圏を中心に販売しています。

企業思念は、心を込めた商品とお客様のニーズに合わせた商品を作り、「安全で住みよい資源豊かな宮古市」に貢献すること。

鈴木さんは三陸沿岸の水産物による独自の加工商品をつくり、販売し、顧客ファンを取り込むことで地元宮古の顔をPRすることに余念がありません。イカ王子として、遠くはアメリカやヨーロッパまでイカ王子ブランドのPRに走り回る行動力は、誰にも負けない闘志が常にみなぎっています。最近は、宮古の真鱈を使った「王子のぜいたく至福のタラフライ」が通販で予約待ちが出るほどの大ヒット!市内のレストランのメニューとしても提供していて、好評を得ています。

又盛岡の福田パンとのコラボ「王子のぜいたく至福のタラフライパン」は今話題の商品として販売しています。生徒たちにとって共和水産のメインの商品を手に入れることは難しいので、福田パンのコラボ商品やレストランのタラフライメニューは是非味わってもらいたいと思いました。

自社の事業の取組みのほかに水産業全体についても詳しく説明して頂きました。魚の漁獲方法、宮古の旬な魚の紹介、魚の見分け方、魚市場の仕事など話を聞いているうちに、漁業に対する知識が生徒たちに少し身についたように思いました。

最後に生徒からの質問で「市場で売れ残った魚はどうするのか」との質問があり、イカ王子がうなずきながら大変いい質問だねと。市場で売れ残った魚は市場のスタッフが再度仲買人さんに買ってもらうようお願いするとのことでした。長年仲買人さんと培った信頼関係が情として存在しているのも、この市場の世界であるとの回答。イカ王子も宮古市魚市場に出入りできるまで3年かかったそうです。

仕事をするうえで挨拶や礼儀をつくさないと相手からの信頼が得られないことは、どの分野でも一緒であることに気づかされた瞬間でした。

 

セミナーを終え、市場の前で集合写真をとり、15時30分に宮古市魚市場を出発しました。宮古の水産業を持続可能な地域産業とするため、熱量を持って取り組む人達からの学びは、生徒たちにとって今後の職業選択を考えるうえでも大きな刺激になったのではないでしょうか。

 

【レポート:宮古地域振興センター 観光コーディネーター 向井】

 

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